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特別インタビュー

外国人材が活躍・共生する社会に向けて ~SCは何をすべきか~

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 2019年4月1日、改正出入国管理法(以下、改正入管法)が施行された。宿泊業や外食業などの14業種で就労を認める新たな在留資格「特定技能」を導入することで外国人労働者の受け入れを拡大、5年間で最大約34.5万人の受け入れを見込む。貴重な働き手として活躍が期待される外国人材だが、現状ショッピングセンター(以下、SC)およびテナント企業において、その受け入れ態勢が十分に整っているとは言い難いだろう。外国人材が求められている背景や採用の現状、期待される効果、また受け入れ側の向き合い方はどうあるべきなのか、(一社)外国人雇用協議会 副会長の梅澤高明氏(A・T・カーニー(株) パートナー/日本法人会長)、理事の原英史氏((株)政策工房 代表取締役社長)に話を聞いた。


梅澤 高明
(一社)外国人雇用協議会 副会長
A・T・カーニー(株)
パートナー/日本法人会長

原 英史
(一社)外国人雇用協議会 理事
(株)政策工房 代表取締役社長

※役職は取材当時のものです。


2017年1月の第27回国家戦略特別区域諮問会議にて、
安倍首相へ流通や飲食、宿泊業などでの外国人材受け入れについて提言した。

日本はもはやファーストチョイスではない

―外国人雇用協議会の概要や設立経緯などを教えてください。

 日本では外国人材に企業の中核として活躍してもらうような環境がなかなか整っていない状況でした。もともと国として移民を受け入れないという立場をとっていますし、建前としては高度な外国人材は受け入れるが単純労働者は受け入れないというのが基本スタンスです。しかし、実態は技能実習生や留学生のアルバイトを低賃金の労働力として使うようなことが常態化していました。こうした状況下で、日本の言語、文化、ビジネス習慣に通じた外国人材を、日本のビジネス社会で最大限に活用できる環境を整えることを目的として、志のある企業が集まって2016年に当協議会を設立。外国人の受け入れ制度の拡大などの政策提言や企業側の受け入れ環境の整備、そして日本のビジネス社会に適応できる外国人材の選択・育成のための試験やプログラムの開発・運用などに取り組んでいます。

―改正入管法施行により日本社会はどう変化するでしょうか。

梅澤 多くの方が「門戸を開けば優秀な外国人材が日本に来る」と考えているようですが、現実はそうはいかないでしょう。スイスのビジネススクール、IMDが発表した「世界人材ランキング2017」によれば、高度外国人材が引き寄せられる国のランキングで日本は世界63カ国中の第51位で、調査対象のアジア11カ国中でも最下位でした。高度人材は世界中で強烈な取り合いがあって、とくにAI関連やデータサイエンティストといった人材は、給料が高い米国や中国に吸い寄せられていきます。また日本でインバウンドに対応するために中堅レベルの外国人材を雇おうとしても、彼らにとってもはや日本はファーストチョイスではないし、過去に技能実習生に対して酷い扱いをしてきたことで、アンチ日本になってしまっている人もたくさんいるのが現状です。

―日本企業の多くはこうした状況に気づいていないのでしょうか。

梅澤 すでに国際競争にさらされて、世界のトップクラスの人材の取り合いに参加をしている企業は太刀打ちできないことをわかっています。しかし、これまで日本人中心に運営をしてきてこれから外国人を採用しようとする、いわばボリュームゾーンの会社はまだそこまで日本が置いていかれているとは思っていないでしょう。たしかにバブルの絶頂期の頃のように世界中の高度人材が日本に向いていた時代もありましたが、それは30年前の話で、今は中国がその立場です。また高度人材はむしろアジアの中でも英語で仕事ができるシンガポールに行きます。製造業や小売の現場でキャリアをスタートしようとする人でも、生活水準や言葉のストレス、収入水準などを総合的に勘案して選ぶわけですから、今の日本は静観できる状況にはありません。

―日本が選ばれない根本的な要因は何でしょうか。

梅澤 来てもらえないという話では、縮小・衰退している国であるとか、閉鎖的な国であるといった、世界から見た日本のイメージが最初のハードルになっています。実際のところ日本経済が縮んでいるわけではないし、インバウンドやロボット関連のような成長産業もあるわけですが、そういうイメージを持たれてしまっている。2つ目は日本人と外国人を区別した採用やキャリアアップの仕組みの不公平感、そしてデザイナーやエンジニアなど世界中で人材争奪戦になっている職種の給料が安すぎることです。

中核人材として活躍してもらうために

―高度な外国人材とは。

 日本の企業や社会で中核として活用してもらえる人だと捉えています。また、日本社会への順応については実は難しい話で、もちろん一定程度順応できないと活躍できませんが、一方で「順応してしまわない」ことが外国人材を受け入れる価値だという考え方もあります。グローバルな考え方を持ち込んでもらって、ぶつかり合って摩擦が生じることも大事です。そこは両面あるということです。
梅澤 日本企業のイノベーション力の弱さの根の部分にあるのは、社内の多様性の乏しさです。空気を読み合って〝阿吽の呼吸〟で意思決定しているような企業は進化しません。空気を読まずに正しいことをきちんと言う人たちが一定数必要です。そこで期待されるのは女性と外国人です。異分子で構わないので、おかしいことをおかしいと言える人が増えることが日本の進化にもつながると思います。

―高度人材と単純労働のための人材が一緒に議論されることが多いのも気になります。

梅澤 私見で申し上げると、単純労働については今でも開ける必要はないと思っています。その職種については機械化や自動化を進める余地が残っているし、単純労働を大量に入れてしまえば、生産性が低いまま現状の供給体制を維持することになってしまう。それは順番が違うと思います。一方で、現状では必ずしも高度人材に分類されていなくても、将来企業の中核人材になる候補生たちは一定数入れていかなければいけない。今回の特定技能はそういう使い方をするべきでしょう。

―特定技能が14業種というのは、かなり限定されている印象を受けます。小売業など今後拡大があるのか気になるところです。

 まだわからない部分もありますが、特定技能をできるだけ中核人材を受け入れる仕組みとして運用していかなければならない。単純労働に近いところに使われてしまう可能性もあるので、運用を見極めたうえでどう拡大していけばいいのか、あるいは別の仕組みとして衣替えをしていくべきなのかを考えていかなければならないと思います。

―今回特定技能が追加され、現在の在留資格はより複雑になった気がします。

 在留資格の整理は、課題の1つとして認識しています。「技術・人文知識・国際業務」という在留資格がありますが、これは文系の人は技術系の仕事ができないといったように、出身学部によって仕事が限定されないよう在留資格を1つにまとめたものです。どういった人材を受け入れたいかという哲学を整理することを含めて在留資格の細部を見直していく必要があるでしょう。
梅澤 たとえば、ファッション業界において最初は店頭で働き経験を積んでからデザインの仕事をさせたくても、販売の仕事ができないということが起こりがちでした。現状の在留資格は堅すぎて、かつ入管行政の裁量の幅も大きすぎるので、いかに透明性を高め、かつ必要な柔軟性を実現する制度にしていくかは継続課題です。

―特定技能の業種だけを見ると、どちらかといえば単純労働を受け入れるための制度と誤解してしまうことを危惧します。

 法案審議の時から政府の説明は明確で、「単純労働ではない」ということで一貫しています。その方針を堅持してなし崩しにしない運用をしてもらいたいです。
梅澤 現在の技能実習の制度を早く廃止すべきだと思います。現状では脱法的な労働者の供給源になっているケースは少なくない。企業が生産性を上げないことの延命措置になっているし、結果的にアンチ日本を育成するきっかけにもなっているのです。

―企業の意識改革、また外国人材の教育については。

 教育に関しては、適性試験の仕組みを試行的にはじめています。外国人材を企業側が選ぶ際に、日本語能力の試験はもちろん、これまでおざなりになっていた日本の社会や経済についてどの程度わかっているのか、文化の理解がどの程度かという部分についても見ています。先ほど話が出たような「異分子」として活躍してもらうにしても、コミュニケーションのための理解は必要です。採用はもちろん、育成にも使えるようなプログラムにしたいと考えています。
 一方、留学生の半分程度しか日本企業への就職を希望しないという状況があって、これは企業が魅力的でない、責任のある仕事をやらせてもらえないなど受け入れ側の企業の問題でもあります。どうしたら優秀な外国人材が入社し活躍してもらえるのかというプラクティスを共有しないといけない。当協議会として、外国人雇用の経験を会員企業間で共有するために、勉強会などの仕組みをつくり活動をはじめています。

SC業界は外国人材にどう向き合うべきか

―SCのディベロッパー(以下、DV)に関しては、外国人材についてまだ関心が低い印象です。

梅澤 一部のDVはSCを含め海外展開をはじめています。また、国内でSCを開発するとしても、そこにインバウンド客の売上げを期待しているのであれば、施設としての設計の段階から外国人の目線は必要です。アウトレットモールなどは外国人材の需要が高いはずです。
 インバウンド関連産業ということで考えれば、SC業界ほど外国人を中核人材として戦力化すべき業界はないと思います。インバウンド市場全体は巨大ですが、数多くのニッチが積み上がることで数兆円規模になっています。世界中にたくさんの国があり、所得層も大きく異なり、趣味趣向も人によって違うのです。多様なニッチ1つひとつを日本人が細かく見ていくことは現実的ではなくて、わかっている人を活用し、その人たちがそれぞれのニッチに対して深掘りをしていく必要があります。そこが外国人材の活躍の舞台になるはずです。採用した外国人材を店頭の現場に置いておけばいいというのは甚だ認識不足だと思います。

―もう1つの問題として、現場での通訳的な仕事はあっても、次のキャリア形成へのイメージが不足しているという点があります。

梅澤 これに関してはトップの認識不足が大きいでしょう。国籍などにかかわらず本社の中核的なポジションに就いて、経営チームを多国籍化していくのがグローバル展開をしている企業では自然な姿です。たとえば店舗は日本にしか出さないとしても、お客様の何割かに外国人を見込んでいるのであれば同じことだと思います。少なくともフェアなキャリア形成の機会をつくらなければ優秀な人材には残ってもらえません。残ってもらえないことは、会社にとって損失です。

―今後の協議会の取り組み、方針は。

 政府の政策に関しては、2018年末に入管法改正案が議論されて、大きな争点となったことそのものが重要な第一歩であり、同時にあくまでも第一歩に過ぎないとも考えています。特定技能についても、方針どおりに中核人材として受け入れていく仕組みにしていくのかという運用面の課題が残っているし、業種の制約という問題もあります。受け入れた人材をステップアップしていくための仕組みもまだ抜けています。そこをどうつくっていくのか、あるいは抜本的な外国人材の受け入れ政策の転換にどうつなげていくのか。引き続き働き掛けていくことが当協議会の1つの取り組みの柱です。
 人材面については、「どういった人たちに日本に入ってきてもらい、どう育成していくのか」という点を意識しながら、認定試験制度や研修制度の開発をしていかなければなりません。また企業の受入れ態勢については、現状業種による差が大きいので、進んでいるところの知見や、逆に苦しんでいるところの経験も共有できるような仕組みづくりを強めていきたいです。

―SC業界にとっても外国人材にどのように向き合うかは大きな課題です。

梅澤 正面から「自分たちが変わらなければいけない」と考えることです。グローバルにやっていくなら外国人材を中核として入れることは世界では当たり前です。たとえば、ホテル業界などは当たり前にやっています。SC業界がこのままでよいのかを真剣に考えるべきです。

(全て敬称略)

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