六本木ヒルズや麻布台ヒルズなど都心を代表する複合施設を運営する森ビル株式会社では、商業施設部門の売上管理業務の効率化を目的に、売上報告項目の削減とOCRシステムの導入を組み合わせた業務改革を推進している。
売上報告項目を従来の11項目から7項目へ削減するとともに、レシートOCRや金券OCRを活用することで、業務の効率化と精度向上を両立。SC協会の提言や勉強会で得た知見を参考にしながら、社内関係者や各施設担当者と連携して導入を進めた取り組みだ。
今回は、商業施設事業部 業務推進部 業務管理グループの伊藤さんと菱沼さんに、見直しの背景や導入プロセス、そして実際に運用を開始してからの成果や今後の展望について伺った。
(取材日:2026年4月20日)
| 森ビル株式会社 | ||
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商業施設事業部 業務推進部 業務管理グループ 伊藤氏 |
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商業施設事業部 業務推進部 業務管理グループ 菱沼氏 |
| ※所属は取材当時のもの | ||
森ビル株式会社における商業施設の概要

- 本題に入る前に、運営されている商業施設の概要について教えてください
森ビルでは、六本木ヒルズ・麻布台ヒルズ・虎ノ門ヒルズ・アークヒルズ・表参道ヒルズ・愛宕グリーンヒルズ・ラフォーレ原宿などの施設を運営しており、全体で約900店舗の売上を管理しています。業種構成は、物販約5割、飲食約4割、サービス約1割となっています。
- 出店契約の形態、賃料形態、預り金管理の方法について教えてください
契約形態は定期建物賃貸借契約が主流で、賃料は歩合賃料や固定賃料を採用しています。
売上金の取り扱いについては施設によって異なり、一部施設では売上金を預かる方式を採用し、その他の施設では預からない形で運用しています。
- 導入している決済の種類とポイント制度について教えてください
全館共通で現金、クレジットカード、電子マネー、コード決済、ギフト券が利用可能です。また、館独自のポイントとして「ヒルズポイント」を導入しており、ポイントが貯まるヒルズアプリ/ヒルズカードを展開しています。
- 売上管理業務に関わる貴社の体制を教えてください
売上管理業務は「売上管理センター」に集約し、全施設の売上を一括管理しています。実務は外部委託先が担い、森ビル商業施設事業部の業務管理グループが全体統括や業務改善を担当しています。各施設の運営担当者とは定期的に連携を行っています。
- 売上報告から売上確定までの流れを教えてください
売上報告は閉店後に各テナントPCからシステムを用いて行われ、翌日の日中に売上管理センターで報告内容の確認を行います。テナントからOCRで送信されたレシートを入力された売上データとシステム上で突合することで精査を行い、問題がなければ売上確定となります。
金券類については現物を提出してもらい、金券用のOCRを活用して枚数・金額を集計しています。なお、精算レシート自体の提出は不要で、紙日報も廃止しています。
- 報告項目はどのように変わったのですか
従来11項目あった報告項目を「純売上」「消費税」「売上控除」「総売上」「金券売上」「総売上-金券(純売上から金券を除いた売上)」「客数」の7項目へ削減しました。
「クレジット売上」「現金売上」「電子マネー売上」「掛売上」については報告不要とし、報告を簡素化しています。また、金券類の取り扱いについても、これまで求めていた券種別・枚数・金額の詳細報告を廃止し、テナント側の集計負担を軽減しています。
<変更後の売上報告項目>

【報告項目】
・純売上
・消費税
・売上控除
・総売上
・金券売上
・総売上-金券売上
・客数
導入にあたっての経緯
- 売上報告の見直しに着手したきっかけを教えてください
各施設がそれぞれの運用方法で行っていた売上管理業務を数年前にセンター化し、業務の標準化や効率化を進めていました。2024年9月に開催されたSC協会の勉強会に参加したことで、売上報告簡素化の考え方に触れ、「これを取り入れれば、業務効率化をより推進できるのではないか」と考え、見直しに着手しました。
- 今回の取組の全体像について教えてください
今回の取組では、「売上報告項目数の削減」と「レシートOCRシステム(金券読み取り機能付き)の導入」の2点に取り組みました。売上報告の項目を見直して簡素化するとともに、OCRを活用することで確認作業の効率化と精度向上を図り、売上管理業務全体の最適化を目指しました。
- SC協会の提言にある4項目化にできなかった理由を教えてください
本来は提言のとおり4項目まで削減可能と考えていますが、システム上の制約により7項目での運用としています。他社も利用している共通システムの仕様によるものであり、改修が容易ではない状況です。
- OCR導入の内容と狙いを教えてください
テナントスタッフが精算レシートをスマートフォンで撮影・送信し、OCRで読み取ったデータと入力値を突合する仕組みを導入しました。これにより、確認作業の効率化と精度向上を図りました。
- 社内での検討体制について教えてください
業務管理グループの社員2名が中心となり進めました。また、各施設の売上管理担当者と、効率化にあたっての懸念点やテナントへの周知方法について協議を重ねました。
- 実現までのスケジュールを教えてください
2024年9月にSC協会の勉強会に参加したのち、自社で進めるにはどうすればよいかの整理に着手しました。そして年末から翌年初頭にかけて方向性を整理し、2025年3月に社内決裁を得ました。
その後、6月に各施設担当者向け説明会を実施し、導入直前の9~10月にはテナント向け説明を行い、導入を進めました。
- 社内の理解を得るための工夫はありましたか
上層部は「売上管理業務の効率化につながる」ことを重視しており、本取組への理解は比較的スムーズでした。一方で、各施設の運営担当者からはキャッシュレス売上の精査簡略化によるサービス低下への懸念がありましたが、店舗側できちんと確認できていれば問題なく今まで通りであることを説明し、理解を得ました。
- テナントとのやり取りについて教えてください
業務管理グループにて各施設の運営担当者と連携し、施設ごとに説明会を実施しました。また、OCRも同時に導入したため、その操作方法をレクチャーする目的で、少人数での説明会を複数回に分けて実施しています。
- テナントへの説明で特に注意した点はありますか
売上報告方法が大きく変わることから、マニュアル類の刷新も行いました。OCRの操作方法や報告手順をまとめた動画資料を作成するなど、テナントへの周知を図りました。
導入後の状況について
- テナント・ディベロッパー双方にどのような効果がありましたか
テナント側では報告項目削減により集計作業の負担が軽減され、ディベロッパー側ではキャッシュレス売上の精査が不要となったことで、全体で約3割の業務削減効果が得られています。
- テナントの反応はいかがでしたか
OCRについては当初やや負担感の声もありましたが、報告項目削減は好評で、全体としては前向きに受け止められています。
- 新たな課題はありますか
OCRの読み取り精度向上が今後の課題です。また、売上報告項目についても、システム制約がなければ、さらに削減できる可能性があると考えています。
- さらなる業務効率化への展望について教えてください
今後はOCRの精度向上を進めるとともに、システム環境が整えば売上報告項目のさらなる削減も検討していきたいと考えています。売上管理業務全体の効率化を進めながら、テナント・ディベロッパー双方の負担軽減につなげていきたいと考えています。








